ありがとう

 

昨年の1月のある日のことです。
一組の若い男女と、そのふたりの手と手をつなぐ
その真ん中にちいさな女の子を挟んだ家族が
入り口からにこやかに入って来ました。
「まあ~久し振り!!」と迎えながら、
私はその幼い女の子を見つめていました。

その若いパパとママは
10年くらい前からの「吹野」のお客様で、
その頃まだ、彼女は大学生でした。
とっても可愛い、おままごとのような二人でした。

いつしか会話を交わすようになり、
松江から来てくれていると知りました。
恥ずかしそうに話し掛ける彼女を
優しく見守る彼・・・
本当に微笑ましく、仲の良い恋人たち でした。

それから、暫く姿を見なくなり、
久方ぶりに入って来た彼女の
お腹が少しふっくらとしていて・・・

結婚の報告と、もうすぐ生まれてくる
新しい命を授かった報告を受けたのです。

そして亦、暫く姿を見なくなっていました。

その二人が、昨年の一月に
あの時、ママのお腹の中にいた、その子の
手を引いて、やって来てくれたのです!!

「この子が、吹野で静かにいい子に
していられるようになるまで待って、
やっと 今日 吹野デビュー です!!」
と、やっぱりママは相変わらずハニカミ
ながら、話してくれました。

お母さんに似て、恥ずかしがりの
ピンクが良く似合うその子は、
節分の日、2月3日で3歳になるんです
と、教えられました。
七五三が近いので髪を伸ばしていることや
保育園のお話もしてくれました。

やっと彼女が慣れてきた頃
帰りの時がやって来ました。

そして、お会計を済ませた帰り際・・・
若いお母さんが、こう呟きました
「この子の名前、ふ き の っていうんです!!」

私は一瞬 耳を疑いました。
「えっ!なんて?!」
もう一度聴き返すと、
「くさかんむりの蕗と、乃木将軍の乃と書いて
            蕗乃といいます・・・」と

ごめんなさい
またまた吹野は感激のあまり
泣いてしまいました。

お父さんとお母さんが、愛を育んだ
その店の名を、愛しい我が子の
名前にしていたのです!!

こんなしあわせ・・・いいのでしょうか?!

それから、時々顔を見せてくれる親子3人
会う度に蕗乃ちゃんは成長して行き、
これこそ本当に、孫の成長を見守る
おばあちゃんの心境です。

今年も数日前に3人仲良くご来店!
蕗乃ちゃんは、葡萄のジュースと
チョコバナナのミニパフェを
美味しそうに平らげてくれました。
その日もピンクの帽子と
ピンクのダウンジャケットで
嬉しそうでした。

 

 

ひとつ困る事は、
お父さんとお母さんが
蕗乃ちゃんを叱る時!!

「こら!ふきの~!!」
と言われると、私が叱られたようで
ドキッ!!っとすること(笑い)