数年前の、まだ雪が舞う、寒い季節の事です。
「向かいの駐車場から、こっちを見ながら、
何だか一生懸命描いている人がいるよ!」
と、お客様に教えられ、窓越しに外を見ると、
本当にこの寒空の下、ニット帽とジャケットに身を包み、
一心にペンを走らせている青年の姿がありました・・・
少し前に、珈琲を飲んで帰りがけに
「あの~、ここのお店を描かせて戴けないでしょうか?!」
と云った青年がいたことを思い出すのに少し時間がかかりました。
その時私は、「描く」のは店内だと思い込んでおり、
まさか外観だとは、想像だにしていなかったもので、
その時の青年と、今そこで描いている若者とが
すぐに一致しなかったのでした。
風邪を引きはしないかと気になり、すぐに温かいカフェオレを作ると、
お節介ですが、「寒いでしょう?!これで温まって~!!」と
カップを手渡すと、「ありがとうございます~」
と恐縮しながら、白い息を吐きながら飲んでくれました。
そっと手元を覗き込むと、そこには目の前の「珈琲屋吹野」が
ひっそりと佇んでいました。
彼の性格を表わすかのように、キッチリと定規で引かれたようなラインで
私の大切な「子供」のように愛おしい珈琲屋が、とても丁寧に描かれていて、
思わず涙が溢れそうになりました。
その後、そこでスケッチする彼の姿は近所で有名になり、
「また今日も描いてるね~}と皆が口々に云うようになりました。
やがて、何ヶ月もかけてその絵は完成し、
彼の個展で展示される事になりました。
加茂川沿いの白壁土蔵群や、米子の古い町並みなどと並んで・・・
ちょっと誇らしい気分にさせてもらいました。ありがとう!!
個展終了後、その絵は私のもとへ届きました。
「よかったら、受け取って下さい」と差し出された
その額に入った一枚の絵は、大切な私の宝物となり、
時々店内に飾らせて戴いています。
その青年が、先日久し振りに訪れてくれました。
「今はどこを描いてるの?!」と訊いてみました。
「今は、公会堂を描いてます~」
相変わらず、照れくさそうに笑いながら教えてくれました。
また、次の個展が愉しみですね~!!
tokki
その絵 是非、拝見したいなぁ~.
水彩画かな?それとも色鉛筆かな?
油絵でないような気がします・・・・・。