居場所

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「ここが一番落ち着くんですよ」
とその人は笑いながら仰います。

五十代の頃からずっと来て下さっているご婦人です。
大山の麓にお住まいです。
ご両親を看取り、一人暮らしになられて何年になるでしょうか。
今は目尻に静かに過ぎた年輪を感じる七十代になられました。

その人が、ひとりで家に居ても落ち着かないと仰るのです。
一人で暮らすには広すぎる家にポツンと一人で居ても
なんだか落ち着かなくて、新聞もゆっくり読めないんですよ と・・・

「ここだとゆっくり本や新聞が読めるんですよ」と
新聞を開いていらっしゃるその横顔を見ていると
広い家の中でひとり食事をしていらっしゃる
淋しげな姿が浮かびます・・・

週に一度の通院の帰りにここへ来るのが唯一の楽しみと云って下さる。

私が吹野の存在価値を感じさせて戴く瞬間です。
嬉しいですね。

埼玉から鳥取大学へ来ている医学生の憩いの場も吹野だと云います。
自室で勉強するよりここの方が落ち着き集中できると云ってくれます。

お客様の話し声も全く気にならないと云います。
お客様の方が彼の勉強の邪魔になるのではと気にかけて下さいますが
かえってそういう音があった方がいいと彼の弁です。

この頃は、勉強より私と話をするのが息抜きになるようで
よく話をするようになりました。

「吹野に通えるのも、あと一年半しかないんです」
と、残り少ない日々を惜しむように
近づく卒業と就職について語ることが多くなりました。

そんなふうに、吹野を心の拠り所にしてくれている人がいる
というしあわせをしみじみ感じています。

そんな折、Kさんが東京で働く娘ろくちゃんからのメールを
見て!!と差し出しました。

受け取り文字を追うと、夏休みに米子に帰るけど、
吹野の休みの日と重ならないように帰りたいから
吹野の臨時休業あれば確認して連絡してほしいという内容でした。

そんなポジションに吹野を置いて戴き感激です!!

本当に「珈琲屋吹野」は「しあわせもの」です。

もう少し、頑張ってみようかな