「アナラポス」

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4月22日夕刻、何の前触れも無く
鈴木昭男さんがいらっしゃいました!!

鈴木さんは網野町在住のアーティストです。
この方も、桂まめださん同様、明日香村の渡辺誠弥氏のご紹介で、
2004年2月に珈琲屋吹野で「音」を奏でて戴きました。

丁度その日、お客様と鈴木さんのお話をしていたので、
まさにその当人ご登場に驚きを隠せない私でした。

トレードマークの帽子、いつもの優しい笑顔で、
私をびっくりさせようと、何も知らせず、
突然のご来訪だったようです。

前日ロンドンからお帰りになったばかり、にも拘らず、
網野町で親しくしている「kanabun」さんに誘われ、
フラ~ッと山陰の旅にいらしたとか!!
いかにも鈴木さんらしい~と笑ってしまいます。

持参のカバンの中には、5年前に吹野で「音」を響かせて下さった
自作の楽器「アナラポス」がありました。
他にも、石笛や、古代の笛の音を幻想的に聴かせて戴いた
あの日あの時の摩訶不思議な「音」たちの記憶が甦って来ました。

話はやはり共通の知人である渡辺氏の話になり、
お互いの逸話が渡辺氏の性格に共通するものがある事が解かり、
改めて、大切にしたい方だと再確認したりしました。

網野町に10年がかりで建設中の自宅があるとか、
「弥生の笛」製作のために100個くらいの石を探し求めているとか、
気の遠くなるようなお話なのですが、鈴木さんの口から零れると
なんとも自然に聴こえて来るのが不思議です。
そんなふうに、「時かゆっくり流れている人」鈴木さん。

今月末には、金沢美術館でのお仕事が控えているとか!!
これからも、益々のご活躍をお祈りしています!!

そして、また、フラ~ッと来て下さい!!
お待ちしていま~す!!

 

 

闘病

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昨年の12月のこと。
いつものように電話が鳴る。
いつものように「珈琲屋吹野です」と出る。
すると、ノイズのような「音」で「マツバラデス」と聞こえたよな気がした。
勿論その声は、私の知っている松原さんとは程遠い「声」でしたが、
「ええ~っ!!マスターですか~?!」と問い返すと
「ソウヤ~」とまた、振り絞るような関西弁に私は言葉を失いました。
「コエガデエヘンノヤ」と、やっと聞き取れる声がする。
声の主は、30年前、珈琲修行に上京した折、2年間お世話になった
東京新宿珈琲屋のマスターでした。

マスターの病との戦いが始まったのは15年くらい前でした。
病名は「悪性リンパ腫」でした。
電話でその病を告げられた時と同じくらいの衝撃があった
今回の電話の声でした。
15年前からずっと自宅での療養が続いていたのですが、
昨年12月容態の悪化で入院されたのでした。

いろいろ質問したい事はあったのですが、
喋るのが辛そうなので、聞き役に専念しました。
お正月を病院で過ごさなければならない事を余儀なくされ、
それが一番の不満のようでしたが、病気治療の為、仕方ありません。

それから五ヵ月後の4月10日、いつものように電話が鳴り、
いつものように出ると、少し間があった後「マツバラデス!!」
と、また振り絞るような声が聞こえて来ました。
ずっと気になっていたので、様子を伺うと
「ヤット 今日 退院ヤ~!!」と、苦しそうな中にも
喜びが伝わってくる返事が返って来ました。
12月には訊けなかった「どうして声が出ないの?!」
という質問をしてみると、
「治療ノタメニ 喉ヲ切ッタカラヤ~」と言う。
「もう、ずっと声は出ないままなの?!」という問い掛けには、
「イズレハ出ルヨウニナルラシイ」と聞き安心する。

30年前、東京の珈琲屋で初めてマスターの珈琲を飲んだ時、
あの日の衝撃は忘れられません。
珈琲の豆が、マスターの注ぐお湯を深呼吸するようにフワフワと膨らみ、
そんな光景を今まで見た事の無かった私は「珈琲の不思議」を目の当たりにし、
そして、その抽出された液体(珈琲)のあまりの美味しさに感動しました。

いつか私にもこんな美味しい珈琲が点てられる様になるのだろうか?!
と始めた修行でしたが、なかなかマスターのようには豆は膨らんでくれず、
なんとかお客様に出せるようになるのに三ヶ月かかりました。
それでもマスターの味には到底及ぶものではありません。

自分の店を持ってからも、ずっとマスターの味に
追いつけ、追い越せ と頑張ってきました。
7~8年前、療養中に故郷兵庫へお帰りになった時、米子まで足を伸ばして下さり、
久し振りに私の点てた珈琲を飲んだ時に、「旨い、美味しい!!」と言って戴き、
漸く卒業証書が貰えたような気がしました。

東京での、あの修行が無かったら、今の私は、今の珈琲屋吹野は無かったと思います。
珈琲の点て方だけではなく、行儀見習や、お客様との接し方、
掃除の仕方からお花の生け方まで、ありとあらゆる、学校や家庭では
教わらなかった事をすべて教えて戴いた、そんな2年間でした。

そんな修行の話はまたいずれ書く事があると思います。

電話で「吹野サンハ元気ソウヤナ~!!」と言われ、つい
「そうなんです!元気だけが取柄なんですよ~!!」と
何気なく言ったのですが、病気を抱えている人にとっては
「元気」はかけがえの無いもの。
心無いことを言ってしまったかも、と、悔やまれます。

恩師の退院を祝し、どうぞ元気でいて下さいと、
祈りを込めて、綴ってみました。

五ヶ月ぶりに美味しい珈琲が飲みたいから珈琲豆を送ってくれと言われ、
早速宅急便で送った珈琲を美味しく飲んで下さってるようです!!

 

春の母娘!!

二十歳代の独身の頃から来てくれているYちゃん。
結婚して、子育てが始まり十年くらいの時が流れたでしょうか。
お母さんそっくりな二人の女の子(小学生)を連れて来てくれました。

オーダーを訊きに行くと、お母さんは珈琲。
子供たちは、それぞれに葡萄ジュースとアイスココア!!
そして、キャラメルバナナトーストと、黒ごま黄な粉トーストを!!

一月ほど前にお母さんは、短大時代の仲間と吹野に集まった折に、
みんなで食べたキャラメルバナナトーストを、
今日は子供たちに食べさせたい!!と、連れて来てくれたようです。

先に飲み物を運び、出来たてアツアツのキャラメルバナナトーストを
持って行くと、もう飲み物の入っていたコップは空になっており、
お待ちかねのトーストを見る二人の目は輝いていました。
身を乗り出し、美味しそうに三人で和やかな食事風景でした。

帰りにお会計をしながら、
「いつもは残すパンの耳も今日はきれいに食べました~!!」と
すっかりお母さんが板についたYちゃんが、笑顔で言いました。

何よりも嬉しい報告でした!!
春休みを満喫して、また、来て欲しいですね!!

我が家の庭で今年初めて鶯が鳴きました。
上手に「ホ~ホケキョ♪」と鳴きました。
桜の花も開き、いよいよ春です!!

侍ジャパン!!

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昨日、14時47分に、「祝、侍ジャパン!!」
という、嬉しいメールがSさんより届きました。
その数分前に、「勝ったよ~!!」と興奮気味の電話もあり、
日本の勝利を知っていましたが、改めて喜びを噛み締めました。
目の前のカウンターには、先程まで自宅テレビで観戦していたけれど、
3-3の同点になり、いたたまれず、家を飛び出し自転車に飛び乗り、
ひたすらペダルを漕いでいたら、ここに着いてました~!!というお客様が!
すぐに勝利をお知らせし、一緒に喜びを分かち合いました。

私も、お客様がいらっしゃらない時に、携帯のワンセグで、
チラチラと気になる経過を観ていました。
9回裏3-2で、ダルビッシュが、一番バッターを三振に取ったところで
若い男女のお客様がいらっしゃり、ワンセグ中断!!
注文の珈琲を準備していると、お客様の方から、
「あ~っ、同点になった!!」という声が聞こえてきた時は、
ガックリ来ていました。
もうダメかも・・・と半分諦めかけていたら、
「あ~っ、延長になった~!!」
という声に、気を取り直し、ただひたすら勝利を祈り続けていました。

凄いですね、侍ジャパン!!
城嶋の好リード、岩隈の好投、それぞれのバッターが、
それぞれの責任を果たし、好守備でピッチャーをバックアップ!!
本当に野球は、個人プレーではなく、チームワークだということを
教えられた気がします。

シャンパンシャワーをかけ合う、侍たちの笑顔、
勝利の美酒に酔う、本当に素敵な笑顔!!
みんなが、輝いていましたね!!

これだけ、日本人の心が一つになる事も、珍しい事ですよね!!!
終わってみれば、「ワールド」というより、
「日韓野球」と言った方がいいくらい、殆どの試合が、対韓国でした。
もっと、世界中のいろんな国と戦えたら、
より面白い大会になるのではないかと私は思うのですが、
みなさんは如何ですか?!

 

不思議な縁の糸

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奈良県明日香村の石舞台近くに「飛鳥藍染織館」はあります。

以前「アラフォー」で紹介させて戴いた渡辺誠弥氏が
1995年に、それまでに収集された藍染の布の魅力を
多くの方に知って貰いたいと開かれた展示館です。

元は造り酒屋だったというその大和棟の館はとても趣があり、
明日香の風景に溶け込み、訪れた人を優しく迎えてくれます。

この藍染館を知るきっかけとなったのは、
NHKのTV「鶴瓶の家族に乾杯」という番組でした!

遡ること6~7年前
明日香村を旅するさだまさしさんが、たまたま訪れた先が
この「飛鳥藍染織館」でした!!

150年前、幕末天保年間に建てられたという
歴史を感じさせるその建物の雰囲気と「珈琲」という文字に
惹かれるようにさださんが足を踏み入れ、珈琲を注文された時、               
奥から暖簾をかき分け登場されたのが、
長身の何やら徒者ではない風態の渡辺氏!! でした。

珈琲を飲みながらの歓談を聴いていると、
渡辺氏は、元NHKのアナウンサーと判明!
その上、神官の資格もお持ちで、そこから車でおよそ5分の
稲渕の外れ、飛鳥川の左岸に立つ「飛鳥川上坐宇須多岐比売命神社」
(御祭神はウスタキヒメノミコト、父神はスサノオ母神はアマテラス、
夫神はオオクニヌシと神々の系譜にあり、宗像三女神の一神
タキリヒメと同神と伝えられる)の宮守りもしていらっしゃるとのこと。

更には蕎麦打ち修行もなさっており、藍染館では
ご自身で打たれるお蕎麦を戴く事も出来るという。
おひとりで、何役をこなされるの?!と驚愕。

やがて、さださんが藍染体験を希望され、
染め上がった自分の作品を空にかざすと、大満足のご様子で
「ん~雅び(みやび)じゃ~(笑い)」と仰ったのです。
すると渡辺氏が間髪置かず、
「さださん、藍は雅び ではなく俚び(さとび)です・・・」
と静かに仰り、その言葉がテロップとして画面に。

辞書には【いなかじみる かざりけのない】とあります。
その「俚び」という言葉が、なんとこの明日香に相応しいこと!!
と、初めて耳にした美しい言葉(日本語)に胸打たれ、心に刻みました。

そして、何故かその時、何の脈絡もないままに、
---私はこの方と、いずれどこかで出会う---
縁も所縁も無い、その日初めてTVで観ただけの人と
いつかめぐり逢うことになる・・・そんな予感めいたものを感じながら
眺めていたのを今でもはっきりと憶えています。

すると、有ろう事か、そのマサカ!!が現実となり、
その翌年、渡辺氏は遥か奈良の都より伯耆の国の珈琲屋吹野に
ある日突然、出現なさったのでした!!
これを「不思議な縁の糸」と云わずして何と云えばいいのでしょうか!!

後に知ることとなるのですが、実はアナウンサー時代に
松江支局に勤務されていた事があり、
その当時の事を憶えていらっしゃる方も多く、また、
藍染の布との出会いも松江時代だったというから、
全く縁が無かったわけではないようです。

円熟した大人でいらっしゃる渡辺氏と、
もう子供ではないけれど、まだ大人にもなりきれていない未熟な私ですが、
いつも「珈琲屋吹野」を気にかけて下さり、叱咤激励されながら
現在もお付き合いを続けさせて戴いています。

多方面に知識豊富で、学ぶところ多く、生き方も前向きで、
今でも「守り」ではなく、「攻め」の態勢でいらっしゃいます。

先日戴いたお便りに、こんな一節がありました。
『命惜しくありません。
それより元気な間の「時」が惜しいです。
この世に何一つ加算せずに死ぬのがイヤです。
             とにかく走ります』と・・・

この言葉に渡辺氏の生き方が凝縮されているような気がします。

私の尊敬する人生の大先輩です!!

明日香村には日本の原風景が今も息づいています。
渡辺氏が、終の棲家にここを選ばれた理由がわかるような気がする、
いにしえの里と、美味しいお蕎麦と、渡辺氏のお話を聴きに、
これからも折りある毎に、出かけたいと思っています。

そろそろ石舞台の桜の蕾も、綻び始めているのではないでしょうか?!
皆さんも是非「心のふるさと」を訪ねてみて下さい!!